はじめに
所有中の物件を売りたい。でも何か細々とトラブルを抱えている物件という認識はあるけれど、実際のところ売買時にトラブルに発生する可能性はどれくらいあるの?告知事項ってどこまでのことを言うの?
そんな心配をされている方は是非本記事を参考にしてみてください!
告知義務とは何か?
『告知義務』という言葉自体はよく聞く方も多いかと思いますが、具体的に内容を説明できない、という方は少なくないのではないでしょうか。実際告知義務とは何なのでしょうか。

法的定義
告知義務とは、売主が知っている買主に不利益となる事実を開示する義務です。
民法の「契約上の信義誠実の原則」や「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」に基づきます。
特に不動産売買においては、重要事項説明や売買契約前の説明責任が重視されます。
告知義務の代表例
【心理的瑕疵】自殺、他殺、事故死、孤独死、事件性のある死亡
【物理的瑕疵】雨漏り、シロアリ、傾き、地盤沈下
【法的瑕疵】再建築不可、建築基準法違反(違反建築物)
【環境的瑕疵】騒音、悪臭、近隣の反社会的勢力
【その他】隣地との越境・境界トラブル、近隣住人との揉め事、地役権の存在
売主に求められる説明責任とその範囲
上記で告知義務とはどういったものはざっくり分かりましたね。では具体的には何をどこまで伝える責任があるのでしょうか

どこまで伝えるべきか?
簡単に言うと、売主が『知っている事実』はすべて伝える必要があります。
知らないことまで調べる義務は基本的にはありませんが、『知っていたのに隠した』場合は契約解除や損害賠償の対象になる可能性が高いです。
『買主が合理的に判断するために必要な情報』が告知対象です。
誤解されやすい例
『10年以上前の自殺』は不要?
→多くの裁判例では告知義務があります。
『隣人が怒鳴ることがある』
→継続的であるようなら環境的瑕疵の可能性があります。
告知したうえで売却を成功させるポイント
告知義務を果たさなければいけないことは法律で決まっているので仕方がないことです。
では、物件にとって『弱点』ともいえる部分を告知した上で売却を成功させるためにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。

ポイント①:価格設定
告知事項がある場合、市場価格より5〜30%下げるのが一般的です。
※瑕疵の内容・程度によって差はあります。
例)事故物件→20~30%下落
近隣トラブル→5~15%
越境→法的処理次第で価格変動
ポイント②:ターゲット選定
投資家の中には相場よりも安く購入できるため、心理的瑕疵やリフォーム前提の物件を歓迎するケースもあります。
買取業者と呼ばれるような不動産業者に関しても、金額の折り合いがつけば問題がある可能性を承知の上で基本的には現状のまま買い取ってくれるため、後々のトラブル発生率の下げるという観点では有力候補となるでしょう。
一次取得者層でも価格重視でリスク条件を受け入れて購入してくれる場合もあります。
伝え方の注意点
告知事項を伝える際、伝え方にも注意点はあります。伝え方を誤ると、自分は伝えたつもりでも告知義務を満たしていないとして、売買後に損害賠償請求を受けてしまう可能性もあるので十分注意が必要です。

曖昧な表現はNG
×「少し気になることがあります。」
○「2021年に浴室天井からの雨漏りがあり、修理済です。」
口頭説明のみは避ける
重要事項説明書・告知書・契約書に明記する。
→誰が見ても伝えた内容、伝えた事実、伝えた時期が分かるように書面に残しておくことは必須事項です。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)との違いと対処法
告知義務を調べていくと『瑕疵担保責任(契約不適合責任)』という言葉と出会うことが多いかと思います。
※2020年4月1日の民法改正により、買主の権利保護強化の観点から、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと名称・内容が変わりました。
内容が混同してしまう方もいらっしゃるので、告知義務と瑕疵担保責任(契約不適合責任)の違い、及び瑕疵担保責任(契約不適合責任)に対する対処法もご説明いたします。

違いの整理
【告知義務】
定義:買主に不利益な事実を説明する義務
対象:売主が知っている情報
期間:売買契約前
免責可能か:原則不可(知っていた事実)
【契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)】
定義:契約内容と違う物件状態があった場合の責任
対象:売主が知らない欠陥も含む
期間:売買後(原則:引渡しから1年以内)
免責可能か:特約で免責可(個人間売買など)
対処法
売主が知っている欠陥は必ず告知する。
→契約書に「現状有姿・契約不適合責任免責特約」を記載することで、知らない瑕疵についての責任は軽減可能(ただし宅建業者が売主の場合は不可)。
瑕疵ありでも売れる実例紹介

最後に、瑕疵があり告知をした上でも売れるような物件とはどのような物件なのか、実例をもってご紹介します。
実例①:事故物件(自殺)
売却価格:周辺相場より約25%減
売却期間:約3ヶ月
対応:詳細な告知+リフォーム提案+価格調整で投資家に売却成功
実例②:隣地越境あり(ブロック塀5cm)
売却価格:約10%減
売却期間:2ヶ月
対応:越境の承諾書を取り付け+司法書士立ち合いで安心感を与える
実例③:近隣トラブル(騒音)
売却価格:15%減
売却期間:約4ヶ月
対応:周囲状況を正確に説明し、「周辺確認済」で納得した一次取得者が購入
まとめ:オーナーに求められる視点とは?
告知義務がある物件は、相場よりも安い価格で売却となるケースが多いことは確かです。しかしながら、正確な情報開示と戦略的アプローチをとることで、値引き率を極力下げることは可能です。
もしご自身の売却希望物件に問題がある場合でも、曖昧にせず、正直に、かつ専門家と連携・相談しながら対応することが成功のカギです。